ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 しかし、カイの目にもハインリヒの目にも、ジークヴァルトの守護者の姿が映ることはなかった。どうがんばってもリーゼロッテが宙を見つめ、独り言を言っているようにしか見えない。

「リーゼロッテ嬢って、すごいんだかすごくないんだか、よくわかんないね」

 あきれたようにカイは言った。

 守護者とは、通常、目に見えるような存在ではなかった。

 力ある者には必ず守護者がついていると言われている。しかし、どんなに能力に長けたものであっても、守護者とは自分の内にいるのをかすかに感じられる程度の存在で、その姿を他人が認めたり、ましてや会話をするなど、とうてい考えられることではなかった。

 ジークヴァルトは幼少期から自分の守護者と会話をしていたようだが、極めて異例なことであった。よほど強い守護者なのだろうとハインリヒなどは思っていた。

 ハインリヒ自身は、一度だけ自分の守護者を見たことがある。

 ――あの日見た守護者は、とても、鮮烈で、苛烈な、うつくしい女の守護者だった。

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