ふたつ名の令嬢と龍の託宣
【第10話 囚われの妖精】
あの鬼のように恐ろしいフーゲンベルク副隊長が、毎日令嬢を連れて歩いている。
そんな噂が、王城の護衛騎士団近衛第一隊の中に駆け巡っていた。その令嬢は妖精のように可愛らしく、とても恥ずかしがりで怖がりらしい。
そんな繊細な令嬢が、あの副隊長の隣にいるなど到底想像できなかったが、目撃者はみな一様に興奮状態だったため、噂が噂を呼び、騎士たちはいつになく騒然となっていた。
王太子殿下の執務室を中心に、王城内の一部では、侍女・女官から下働きの使用人まで女性という女性を徹底的に排除していたため、王太子付きの近衛第一隊の周りには、女っ気がまったくと言っていいほどなかった。
毎朝、ジークヴァルトがリーゼロッテを連れていく時間になると、騎士たちは意味もなく廊下をうろついていた。最近では、第一隊以外の騎士たちも、その令嬢を一目見ようと押し寄せる始末である。
「あの、ジークヴァルト様」
その日も例のごとく、ジークヴァルトに抱えられながらリーゼロッテは王城の廊下を運ばれていた。リーゼロッテがお茶会の日以来王城に留まってから、半月ほど経過していた。
「なんだ?」
「わたくし、自分で歩きますので、降ろしていただけませんか?」
そんな噂が、王城の護衛騎士団近衛第一隊の中に駆け巡っていた。その令嬢は妖精のように可愛らしく、とても恥ずかしがりで怖がりらしい。
そんな繊細な令嬢が、あの副隊長の隣にいるなど到底想像できなかったが、目撃者はみな一様に興奮状態だったため、噂が噂を呼び、騎士たちはいつになく騒然となっていた。
王太子殿下の執務室を中心に、王城内の一部では、侍女・女官から下働きの使用人まで女性という女性を徹底的に排除していたため、王太子付きの近衛第一隊の周りには、女っ気がまったくと言っていいほどなかった。
毎朝、ジークヴァルトがリーゼロッテを連れていく時間になると、騎士たちは意味もなく廊下をうろついていた。最近では、第一隊以外の騎士たちも、その令嬢を一目見ようと押し寄せる始末である。
「あの、ジークヴァルト様」
その日も例のごとく、ジークヴァルトに抱えられながらリーゼロッテは王城の廊下を運ばれていた。リーゼロッテがお茶会の日以来王城に留まってから、半月ほど経過していた。
「なんだ?」
「わたくし、自分で歩きますので、降ろしていただけませんか?」