ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 異形の者にも、多少は慣れてきた。いや、いまだに怖いは怖いのだが、何となく距離のとり方はわかってきた。

 近づかない、目を合わせない、大げさに反応しないなど、そういうことに気をつけていれば、ジークヴァルトの守り石のおかげか、小鬼たちはリーゼロッテに近づいてこなかった。

「却下だ。お前の足だと辿りつくのに何時間かかると思う」
「そんなにはかかりませんわ! それに、毎日送り迎えの手間をおかけするのは申し訳ないですから、これからは、ひとりで行き来いたします」
「却下だ」

 足を緩めることなく、ジークヴァルトは進んでいく。

「なぜですか? わたくしの足が遅いなら、わたくしが早めに部屋を出ればすむことです。道はもう覚えましたから、ひとりでも大丈夫ですわ」
「却下だ。諦めろ」

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