ふたつ名の令嬢と龍の託宣

【第11話 逢瀬の秘め事】

「守り石が原因なのか?」

 自身の執務室で書類に目を通しつつ、ハインリヒは聞き返した。

「わからない……石が干渉して、目詰まりの原因になっている可能性もあるが」

 こちらも書類を片手にジークヴァルトは答えた。リーゼロッテはこの場には来ていない。今日は一日、客間で休むよう侍女のエラに伝えてあった。

「普段は石に力を込めるついでに、石を通してダーミッシュ嬢の力の流れを確認していたんだが。……昨日は、石を外した状態で直接流れをみた」
「そうしたら、彼女の力が暴走しそうになった?」
「ああ」

 そう答えながらも、何か納得はしていない口ぶりだった。

「腑に落ちていない顔だな、ヴァルト」
「初日も石を通さなかったが、その時は力の暴走はなかった。それに昨日ダーミッシュ嬢の中で、何か、別の力をうっすらと感じた。本来の力を隠そうとする……薄い膜のような力だ」

 気づかせないくらい薄いのに、とても強固な。

「膜……、か」

 もう一度そう呟いたジークヴァルトをハインリヒは見やった。

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