ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「では、問題は守り石ではなく、その薄い膜、ということか?」
「その可能性は高い。だが、もう一つ気になることがある。石を通さず流れを見たとき、オレの力が引き込まれる感覚があった。力を注ぎこみすぎて、容量オーバーになった可能性もある」
「リーゼロッテ嬢の中に、ヴァルトの力がか?」
「あくまで、オレの感覚だが。ダーミッシュ嬢にあの時どうだったか聞いてみないことには何とも言えない」

 リーゼロッテの力に関しては、イレギュラーなことばかりだ。

 異形の者の姿が視える人間は、貴族・平民にかかわらずある程度存在するが、それらを浄化する能力は主に王家とその血筋が入った者に特異的に現れるものだった。全員に発現するわけではなかったが、龍との契約による付随的な能力と昔からみられている。

 しかし、力の強弱はあれど、彼女のように力があるのに全く使いこなせないなどの事例は、今まで聞いたこともないし、調べたところ記録にも残ってはいなかった。

 ハインリヒなどは、力の存在自体、なぜあるのか、なぜ使えるか、どう使うのかなど、考えるまでもなく当たり前のものだと認識してきた。

「もし、力を流し込めるなら、外へと導くことも可能かもしれないな」

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