ふたつ名の令嬢と龍の託宣

【第13話 死者の行進】

 後ろ手に扉を閉めたカイは、扉からはみ出した異形たちに一瞥を向けた後、「ああ、もうっ」と言って扉に蹴りを食らわせた。異形たちは振動でドアの縁からボトリと床に落ち、そのままジュっと消えていった。

「部屋を出たら、城のあちこちで異形が湧いて出てきてて、王城内はパニック状態なんですよ。オレの可愛い令嬢たちが待っているのに!」

 公務どころではない状況に、カイは腹立たしそうに言った。

「ハインリヒはどうした?」
「ハインリヒ様は今、王のいる玉座の間に向かっているかと。王城内は異形が視えないものにも影響が出ているので、キュプカー隊長が指揮をとってみなを避難させてます」

 そう言いながらカイは、背で押えるように扉にもたれかかっている。誰かが乱暴に叩いているかのように扉がガタガタと激しく揺れた。

「ジークヴァルト様もすぐ来るようにとのご命令です」

 扉がきしむように悲鳴をあげた。意を決したようにカイが扉を開け放つと同時に、ジークヴァルトがリーゼロッテを抱え上げる。そのままふたりは廊下へ飛び出した。

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