ふたつ名の令嬢と龍の託宣

【第15話 母の面影】

「小鬼は視えるな?」
「はい、視えますわ」

 ジークヴァルトの問いに、リーゼロッテは神妙な顔で頷いた。

 ふたりは王太子用の応接室のソファに並んで腰かけていた。リーゼロッテは、ジークヴァルトの守り石をその手に握りしめている。

 目の前のテーブルには、カイの淹れた紅茶が置かれ、その横、リーゼロッテの正面に一匹の小さな異形の者がうそうそと蠢いていた。

 ジークヴァルトは大きな手を伸ばし、リーゼロッテが手にするペンダントを無言で取り上げた。リーゼロッテはその動きを黙って目で追う。

「どうだ、視えるか?」

 ジークヴァルトは再び問いかけた。 
 リーゼロッテが視線を目の前のテーブルに戻すと、そこにいたはずの異形の姿が消えている。

「……視えないですわ」

 リーゼロッテが絶望的な顔でそう言うと、それを後ろで見ていたカイが盛大にため息をついた。

「結局、振り出しに戻ったってだけ?」

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