ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 王太子用の応接室を出てカイはハインリヒの背を追いながら、あんな近くでふたりはよく耐えられたものだとあの日のことを思い返していた。もしあの場に自分がいたら、発狂していたかもしれない。

 ふとアンネマリーの涙を思い出した。彼女がいなかったら、今頃自分はどうなっていただろう?

 あれも無知なる者の力なのだろうか。
 正直、彼らの存在など、今まで気にも留めていなかったのだが。

(調べてみる価値あり、か)

 カイはそう思うと、行き詰っていた現状打破への糸口を捕まえたような気がして、その口元に知らず笑みを浮かべていた。

< 286 / 678 >

この作品をシェア

pagetop