ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 あの日、カイがリーゼロッテの客間を出て玉座の間に向かうと、王城内は仰々しいほどの神気に包まれていた。

 途中の廊下には、あれほどいた異形の者たちは欠片ほどもいなかった。中には、浄化に抗うものもいたようだが、そのほとんどは有無を言わさず天に還っていったようだ。

(どんだけ暴力的な力なんだか)

 静寂を取り戻した王城の廊下でカイはそんなことを思った。

 玉座の間にたどり着くと、広間の真ん中で、眠るリーゼロッテを胸に抱きしめているジークヴァルトと、その後ろで片膝を立てて座ったまま、じっと上を見つめているハインリヒがいた。

「終わったんですか?」

 カイの問いに、ジークヴァルトが「ああ」と短く答えた。

 リーゼロッテはジークヴァルトの腕の中で、安らかな寝顔で眠っていた。
 ここのところずっと優れない顔色をしていた彼女だったが、のぞき込んだその頬はバラ色に染まっており、色づいた唇は幸せそうに弧を描いていた。

(あの力がラウエンシュタインの秘密なのか……)

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