ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 ここブラオエルシュタインでは、貴族の令息・令嬢たちは、一般的に十五歳で社交界デビューを果たす。十三歳くらいから身内のパーティーなどに出席する者もいるが、本格的なデビューは、年に一度王城で開催される大規模な夜会でおこなわれていた。

 今日、王妃に招待されたのは、デビュー前の令嬢のみ。そんな年端もいかない令嬢たちが、いきなり王妃のお茶会に招待されるのは、近年では異例のことであった。

 王妃のお茶会と称したこの会は、その実、王位継承者である王太子殿下のお見合いパーティーである――

 そんな囁きが控えの間に流れ、招待された各家が適度な距離をとつりつつも、それとなく探りながら、お互いを牽制し合っていた。

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