ふたつ名の令嬢と龍の託宣 -龍の託宣1-
(お義父様(とうさま)たちは、このことをご存知だったのかしら……?)

 部屋中で、ひそひそと繰り広げられる噂話を耳にすれば、社交界にうといリーゼロッテにも、自分に招待状が届いた理由が理解できた。

「お嬢様、お加減はいかがですか?」

 物思いにふけっていると、お茶会に同行した侍女のエラが、いつも以上に青白い顔の主人を、心配そうにのぞき込こんでいた。

「大丈夫よ、エラ」

 座っている椅子の背後に控えるエラを振り返り、安心させるようにリーゼロッテはそっと微笑んだ。その姿は何とも儚げである。

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