ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「食べちゃいたいわ」

 アデライーデが目をらんらんとさせて言うと、顔をしかめたジークヴァルトがリーゼロッテをその背に隠すように腕を引いて移動させた。

「もう、ジークヴァルトは職務に戻りなさい。ここからはわたしの管轄よ」

 そう言うとアデライーデは、リーゼロッテの前に跪いて、恭しく騎士の礼を取った。

「王の勅命により、リーゼロッテ様の護衛を任されましたアデライーデ・フーゲンベルクにございます。あなたをお守りいたします……この命に代えても」

 アデライーデはリーゼロッテの白い手を取り、その指先に口づけを落とした。

 リーゼロッテの頬がぽっと染まる。
 同時に、ジークヴァルトの口から小さく舌打ちがもれた。

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