ふたつ名の令嬢と龍の託宣
【第18話 愛しい人へ】
「ねえ、エラ」
移動中の馬車の中で、リーゼロッテは向かいに座るエラに声をかけた。
公爵家の馬車は揺れも少なく、座り心地がとてもよかった。お茶会へ行くときにリーゼロッテは睡眠薬を飲んで眠っていたので、他と比べようもなかったが、馬車の中は思った以上に快適だった。
窓から外を見ると、馬に乗ったアデライーデが、馬車の横を並走している。ふと目が合うと、アデライーデはリーゼロッテに艶やかな視線をよこしてきた。
頬を赤らめながらエラに向き直ると、リーゼロッテは意を決したようにエラに尋ねた。
「ねえ、エラ。わたくし、子供のころから公爵家へお手紙を書いていたでしょう?」
「はい、わたしがお屋敷に奉公にあがった時には、もう何年もお書きになっていたようでした」
リーゼロッテの問いに、エラは頷いて答えた。エラがダーミッシュ家にやってきたのは、リーゼロッテが十歳の時だった。
「それがどうかなさいましたか?」
不思議そうにエラが聞くと、リーゼロッテは深刻そうな表情をした。
「わたくし……公爵家のどなたとお手紙を交換していたのかしら?」
エラは聞かれた意味がわからず、「公爵様だと伺っておりますが」と首をかしげた。
移動中の馬車の中で、リーゼロッテは向かいに座るエラに声をかけた。
公爵家の馬車は揺れも少なく、座り心地がとてもよかった。お茶会へ行くときにリーゼロッテは睡眠薬を飲んで眠っていたので、他と比べようもなかったが、馬車の中は思った以上に快適だった。
窓から外を見ると、馬に乗ったアデライーデが、馬車の横を並走している。ふと目が合うと、アデライーデはリーゼロッテに艶やかな視線をよこしてきた。
頬を赤らめながらエラに向き直ると、リーゼロッテは意を決したようにエラに尋ねた。
「ねえ、エラ。わたくし、子供のころから公爵家へお手紙を書いていたでしょう?」
「はい、わたしがお屋敷に奉公にあがった時には、もう何年もお書きになっていたようでした」
リーゼロッテの問いに、エラは頷いて答えた。エラがダーミッシュ家にやってきたのは、リーゼロッテが十歳の時だった。
「それがどうかなさいましたか?」
不思議そうにエラが聞くと、リーゼロッテは深刻そうな表情をした。
「わたくし……公爵家のどなたとお手紙を交換していたのかしら?」
エラは聞かれた意味がわからず、「公爵様だと伺っておりますが」と首をかしげた。