ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「お前が、なぜ、ここにいる!?」

 リーゼロッテの腕をつかみながら黒髪の騎士は、低い声で問う。なぜ、と言われても王妃に招待されたからなのだが。

 ぽかんと口を開けたまま、リーゼロッテはジークヴァルトの顔を見上げていた。
 リーゼロッテは、さっきまであれほど感じていた、おぞましいほどの恐怖をきれいさっぱりなくしていた。青の瞳に射抜かれて、その代わり、胸の真ん中あたりがじわりと熱くなる。

 いつの間にか、ジークヴァルトを覆っていた黒いモヤは霧散していた。その無表情の整った顔がリーゼロッテの緑の瞳に、はっきりと映った。

 ジークヴァルトと見つめ合ったまま、動けないでいたリーゼロッテは、吸い込まれそうな、その深く青い瞳が、この世のものとは思えないほど、美しく、綺麗だと、ただただ、そう思った。


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