ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「公爵様から、返事のお手紙が届いております」
「え? もう?」

 驚きながらもうれしそうに微笑むリーゼロッテをみて、アデライーデもつい顔をほころばせた。弟の無駄な努力が多少は実っているのかと思うと、次に会ったときにジークヴァルトをからかい倒したくなる。不遜な仏頂面がゆがむのを想像して、アデライーデはくすりと笑った。

「アデライーデお姉様?」
「なんでもないのよ。それで、ジークヴァルトは何て?」

 リーゼロッテは封筒を開いて手紙を読んでみた。ここ一カ月、毎日のように会っていたジークヴァルトと、再び手紙でやりとりしていることが、ちょっと気恥しく感じられる。

「首飾りの守り石をペンダントに作り替えるために、職人の方がこちらに来るよう手配してくださったそうです。それと念のために予備の守り石を送っていただいたようですわ」

 ダニエルが手にした箱を受け取って中を確認していみると、そこには普段身に着けているペンダントと同じくらいの大きさの守り石が、二つほど入っていた。

 どれも綺麗な青にゆらめいていて、リーゼロッテはほうとため息をついた。

「ヴァルトにしては気が利くわね」

 アデライーデの言葉に、なぜだかリーゼロッテはほっとした顔をした。

「あら、なぜリーゼロッテがほっとしているの?」
「いえ、ヴァルト様がこんなに早くにお返事をくださるとは思っていなかったものですから……」

 アデライーデがいじわるそうに笑うと、リーゼロッテはあわてたように顔を赤らめた。

 それを聞いたアデライーデは、ジークヴァルトの侍従が以前言っていた言葉をふいに思い出した。
 ジークヴァルトは子供の頃から、リーゼロッテからの手紙を心待ちにしているのだと。そのときは、まさかあのジークヴァルトがと思っていたのだが。

 アデライーデは思わず吹きだした。

 こうやって即返事を書いてしまうほど、ジークヴァルトはずっとリーゼロッテを気にしているということだ。

(あの朴念仁にも人並みの心があったのね)

 いつまでもくすくすと笑っているアデライーデを、リーゼロッテは不思議そうに見つめていた。

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