ふたつ名の令嬢と龍の託宣
     ◇
 その夜、リーゼロッテは一週間ぶりに、ジークヴァルトの守り石をはずして眠りについた。力がこもって暴走しないように、定期的に守護者の力を解放するためだ。

 騎士服に着替えたアデライーデは、眠らずにリーゼロッテの隣の部屋で控えていた。そのことはリーゼロッテには知らされなかったのだが。

 アデライーデは、報告書にあった“聖女の力”には十分注意するように、という文章を、身をもって体験した。

 リーゼロッテの強い力が、屋敷の隅々まで包み込んで行く。

(これは、無知なる者にしか耐えられないわね)

 力あるものがこの浄化を受け入れると、己の全てを失いそうだ。なぜだかアデライーデはそんなふうに思った。

 リーゼロッテの力は、いやなものを全て捨て去って、無の境地になれそうだった。

(――いっそそれができたら楽かもしれない)

 そんなことを思いながらアデライーデは、重圧に耐えながら一睡もせず夜を明かした。

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