ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「……何かしら?」
護衛の職務中だからと、控えめに伯爵一家を見守っていたアデライーデが、ふと緊張した声で顔を上げた。
そばにいたダーミッシュ家の護衛の男は、アデライーデの見ている方向に目をやるが、何も変わったものは確認できず訝し気な顔をする。しかし、程なくしてその方向から馬を駆る人影が近づいてくるのが目に入った。
ダーミッシュ領は平和で、護衛たちはわりとのんびりとすごしていた。アデライーデの緊張感に触れ、護衛の男はこの令嬢は伊達に騎士団に所属してないのだと、その身を引きしめた。
「あのバカ、何をしにきたのかしら」
横にいたアデライーデが緊張を解いた様子でそう呟いたので、護衛の男は近づいてくる馬影に目をやった。
襲歩で近づいていた馬は、やがて速歩となってこちらに向かっている。馬上の人物は、黒衣の騎士服を纏った黒髪の青年であることに護衛は気がついた。
近づくほどに、その青年からは妙な威圧感を感じる。黒衣の騎士は少し乱れた黒髪をなびかせ、ピクニックを楽しんでいた一同の近くへと馬を進めた。
「ジークヴァルト様!?」
リーゼロッテが驚いたようにその名を口にした。
馬上から無表情で見下ろすジークヴァルトは、麗らかな陽の光の下をもってしても、その場にいたほとんどの人間を震えさせ、すくみ上らせたのだった。
護衛の職務中だからと、控えめに伯爵一家を見守っていたアデライーデが、ふと緊張した声で顔を上げた。
そばにいたダーミッシュ家の護衛の男は、アデライーデの見ている方向に目をやるが、何も変わったものは確認できず訝し気な顔をする。しかし、程なくしてその方向から馬を駆る人影が近づいてくるのが目に入った。
ダーミッシュ領は平和で、護衛たちはわりとのんびりとすごしていた。アデライーデの緊張感に触れ、護衛の男はこの令嬢は伊達に騎士団に所属してないのだと、その身を引きしめた。
「あのバカ、何をしにきたのかしら」
横にいたアデライーデが緊張を解いた様子でそう呟いたので、護衛の男は近づいてくる馬影に目をやった。
襲歩で近づいていた馬は、やがて速歩となってこちらに向かっている。馬上の人物は、黒衣の騎士服を纏った黒髪の青年であることに護衛は気がついた。
近づくほどに、その青年からは妙な威圧感を感じる。黒衣の騎士は少し乱れた黒髪をなびかせ、ピクニックを楽しんでいた一同の近くへと馬を進めた。
「ジークヴァルト様!?」
リーゼロッテが驚いたようにその名を口にした。
馬上から無表情で見下ろすジークヴァルトは、麗らかな陽の光の下をもってしても、その場にいたほとんどの人間を震えさせ、すくみ上らせたのだった。