ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「力は使っていないな?」
ふいにそう言われて、リーゼロッテは「はい、使っておりません」と真顔に戻って言葉を返した。
領地に帰ってきてからは、一度も異形の浄化は行っていない。ジークヴァルトに十五歳になるまでは、力は不用意に使わないよう言われていた。
ジークヴァルトは、自分の目の届かないことろでリーゼロッテが力を使うことが心配なようだ。
(本当に心配性よね。アデライーデ様だっていらっしゃるのに)
リーゼロッテが力を解放しているのは、守り石をつけずに眠る夜だけだった。夢は相変わらずみるのだが、それは夢なのだと今では割り切って気にしないことにした。
すべては十五の誕生日を迎えてからだ。
十五歳になったらリーゼロッテは、ジークヴァルトの公爵家へ赴く手はずになっている。表向きは病気の治療の継続と花嫁修業だったが、リーゼロッテの中では武者修行の旅と位置付けられた。
(カイ様に笑われっぱなしなのも悔しいし)
リーゼロッテは、小鬼くらいはひとりで浄化できるようになりたかったのである。
「誕生日を迎えてもすぐに力は使うな」
守護者であるジークハルトが、リーゼロッテが十五になれば大概の事は解決すると言っていたが、実際はどうなるかわからない。
ジークヴァルトはリーゼロッテの誕生日に領地には来られないと言っていたので、やはり目が届かない時に力を使われるのが嫌なのだろう。
「承知しております。わたくし、公爵家にお伺いするまでは、ひとりで力を使ったりはいたしませんわ」
心配性の保護者を安心させるように、リーゼロッテは淑女の笑みを浮かべて答えた。「ああ」と言うと、ジークヴァルトはその手をリーゼロッテの頭にポンと乗せた。
ふいにそう言われて、リーゼロッテは「はい、使っておりません」と真顔に戻って言葉を返した。
領地に帰ってきてからは、一度も異形の浄化は行っていない。ジークヴァルトに十五歳になるまでは、力は不用意に使わないよう言われていた。
ジークヴァルトは、自分の目の届かないことろでリーゼロッテが力を使うことが心配なようだ。
(本当に心配性よね。アデライーデ様だっていらっしゃるのに)
リーゼロッテが力を解放しているのは、守り石をつけずに眠る夜だけだった。夢は相変わらずみるのだが、それは夢なのだと今では割り切って気にしないことにした。
すべては十五の誕生日を迎えてからだ。
十五歳になったらリーゼロッテは、ジークヴァルトの公爵家へ赴く手はずになっている。表向きは病気の治療の継続と花嫁修業だったが、リーゼロッテの中では武者修行の旅と位置付けられた。
(カイ様に笑われっぱなしなのも悔しいし)
リーゼロッテは、小鬼くらいはひとりで浄化できるようになりたかったのである。
「誕生日を迎えてもすぐに力は使うな」
守護者であるジークハルトが、リーゼロッテが十五になれば大概の事は解決すると言っていたが、実際はどうなるかわからない。
ジークヴァルトはリーゼロッテの誕生日に領地には来られないと言っていたので、やはり目が届かない時に力を使われるのが嫌なのだろう。
「承知しております。わたくし、公爵家にお伺いするまでは、ひとりで力を使ったりはいたしませんわ」
心配性の保護者を安心させるように、リーゼロッテは淑女の笑みを浮かべて答えた。「ああ」と言うと、ジークヴァルトはその手をリーゼロッテの頭にポンと乗せた。