ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 “リーゼロッテ”や“この世界”を俯瞰(ふかん)して、客観的に見てしまう癖はいまだ残っているが、こうやって動かそうと思えばリーゼロッテの体を自分の意思で動かせる。

 転べば痛いし、ご馳走を食べればおいしいと思う。幸せな気分にもなるし、嫌だつらいと思うこともたくさんあった。まぎれもなくリーゼロッテは自分であり、この世界に確かに今生きているのだ。

 この世界だっておとぎ話などではない。人々が生活を営み、みな懸命に生きている。この世はよろこびにあふれ、時には理不尽なほどかなしく苦しいことだって当たり前のように起こる。

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