ふたつ名の令嬢と龍の託宣
【第24話 不動のカーク】
「エラ様、この部分はどうやるのですか?」
「ああ、これはステッチが少々複雑で、ここからこちらへこうしてこうやると……」
「なるほど! エラ様、さすがです!」
「エラ様! こちらも見てください!」
「ああ、よくできています。この図柄を短期間でマスターできるなんて呑み込みがはやくてすごいですね」
「いいえ、すごいのはエラ様ですわ! エラ様の指導がお上手なのです!」
「わたしのこれはどうですか? あまり自信がなくって」
「ああ、ここはこうしてこうしたほうが。でもここはとてもきれいにできていますね」
「きゃあ、エラ様に褒められちゃった!」
エラは公爵家の一室で、使用人の少女たち数人に囲まれていた。エラの刺繍の腕前を聞きつけた公爵家の侍女長に、指導をしてほしいと頼まれたのだ。
エラはお付きの侍女としてリーゼロッテと共に公爵家に赴いたわけだが、自分の待遇に少々困惑していた。
リーゼロッテは伯爵家の令嬢だ。公爵の婚約者であるから、その扱いがそれ相応なのは当然のことである。
しかし、自分は一介の侍女だ。にもかかわらず、リーゼロッテほどではないものの、公爵家の使用人にかしずかれきちんとした客人扱いをされている。
公爵家でエラ専用の侍女まで用意されていた。侍女に侍女をつけてどうするのだ。エラは必死に断ったが、エラが受け入れないとその者の職が失われると言われては受け入れざるを得なかった。
自分が歩いていると使用人が道を譲り、通り過ぎるまで頭を下げられる。慣れないのでやめてほしいと訴えても、その対応は一向に変わる様子はない。
「ああ、これはステッチが少々複雑で、ここからこちらへこうしてこうやると……」
「なるほど! エラ様、さすがです!」
「エラ様! こちらも見てください!」
「ああ、よくできています。この図柄を短期間でマスターできるなんて呑み込みがはやくてすごいですね」
「いいえ、すごいのはエラ様ですわ! エラ様の指導がお上手なのです!」
「わたしのこれはどうですか? あまり自信がなくって」
「ああ、ここはこうしてこうしたほうが。でもここはとてもきれいにできていますね」
「きゃあ、エラ様に褒められちゃった!」
エラは公爵家の一室で、使用人の少女たち数人に囲まれていた。エラの刺繍の腕前を聞きつけた公爵家の侍女長に、指導をしてほしいと頼まれたのだ。
エラはお付きの侍女としてリーゼロッテと共に公爵家に赴いたわけだが、自分の待遇に少々困惑していた。
リーゼロッテは伯爵家の令嬢だ。公爵の婚約者であるから、その扱いがそれ相応なのは当然のことである。
しかし、自分は一介の侍女だ。にもかかわらず、リーゼロッテほどではないものの、公爵家の使用人にかしずかれきちんとした客人扱いをされている。
公爵家でエラ専用の侍女まで用意されていた。侍女に侍女をつけてどうするのだ。エラは必死に断ったが、エラが受け入れないとその者の職が失われると言われては受け入れざるを得なかった。
自分が歩いていると使用人が道を譲り、通り過ぎるまで頭を下げられる。慣れないのでやめてほしいと訴えても、その対応は一向に変わる様子はない。