ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 こてんと首をかしげたリーゼロッテの口元に、すっとクッキーが差し出された。いつの間にか目の前まで来ていたジークヴァルトが、無表情でクッキーを突きつけている。

 絶対に人前ではやらないでほしい。

 そう思いながらも、お願いを聞いてもらった手前、拒否することもできなかった。世の中は何事も等価交換なのだ。

 涙目になりながらリーゼロッテは、ジークヴァルトのその手のクッキーを、自らぱくりと口にした。


 その日から公爵家のリーゼロッテの部屋の前に、護衛のカークが貼りつくようになった。歴史あるフーゲンベルク家に後に長く伝えられる、リーゼロッテ伝説の幕開けであった。

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