ふたつ名の令嬢と龍の託宣
『ははは、同調してる同調してる』
ジークヴァルトが指を動かすたびに、机に上にあった書類やペンが飛び散った。テーブルや調度品がカタカタと震え、異形の者たちが大きくざわめきはじめる。
「あああ、ヴァルト様! 仕事サボって何やっちゃってるんですか!」
青ざめたマテアスが慌てて駆け寄ってきた。
「ああ! 修理したばかりの置き時計がっ」
マテアスの悲鳴に近い叫び声がこだまする。
リーゼロッテの唇を弄び続けるジークヴァルトに、それに呼応するように周りで騒ぎだす異形たち。がっちゃがっちゃとひっくり返る部屋の中、真っ赤になったリーゼロッテからまき散らされる浄化の光に、巻き込まれては消えていく異形の数々。
「あああ、渾身の執務室が……」
目の前の惨状にマテアスががくりと膝をついた。灰となったマテアスを、その後ろでエマニュエルがツンツンとつついている。
そんなカオスな様子をジークハルトは、それはそれは楽しそうに眺めやっていた。
自動書記で浮世絵美人が描かれた領地の書類は、後日そのまま王都に送られて、何事もなく王の執務室へと届けられた。
書類を捲ったディートリヒ王の手がほんの一瞬だけ止まり、その口元にうっすらと笑みが浮かぶ。
「ラウエンシュタインの聖女か」
そう呟くと王の笑みが深まった。
滅多なことでは笑わない王の笑顔は、見た者を幸せにするという。そんな貴重な笑みを目にした者は、残念ながら、誰ひとりとしていなかった。
ジークヴァルトが指を動かすたびに、机に上にあった書類やペンが飛び散った。テーブルや調度品がカタカタと震え、異形の者たちが大きくざわめきはじめる。
「あああ、ヴァルト様! 仕事サボって何やっちゃってるんですか!」
青ざめたマテアスが慌てて駆け寄ってきた。
「ああ! 修理したばかりの置き時計がっ」
マテアスの悲鳴に近い叫び声がこだまする。
リーゼロッテの唇を弄び続けるジークヴァルトに、それに呼応するように周りで騒ぎだす異形たち。がっちゃがっちゃとひっくり返る部屋の中、真っ赤になったリーゼロッテからまき散らされる浄化の光に、巻き込まれては消えていく異形の数々。
「あああ、渾身の執務室が……」
目の前の惨状にマテアスががくりと膝をついた。灰となったマテアスを、その後ろでエマニュエルがツンツンとつついている。
そんなカオスな様子をジークハルトは、それはそれは楽しそうに眺めやっていた。
自動書記で浮世絵美人が描かれた領地の書類は、後日そのまま王都に送られて、何事もなく王の執務室へと届けられた。
書類を捲ったディートリヒ王の手がほんの一瞬だけ止まり、その口元にうっすらと笑みが浮かぶ。
「ラウエンシュタインの聖女か」
そう呟くと王の笑みが深まった。
滅多なことでは笑わない王の笑顔は、見た者を幸せにするという。そんな貴重な笑みを目にした者は、残念ながら、誰ひとりとしていなかった。