ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「いや、坊主、お前の剣捌きは子供のものとは思えなかったぞ!」
「そうだとも! ぜひ騎士団に入団しないか!」
「あいつはお調子者だからな。きっと油断したんだ。まあ油断しなくても、坊主の方が腕は上そうだ!」

 団員たちに囲まれて、ルカは戸惑いながらも照れたようにはにかんだ。
 その愛らしい姿に(まなじり)を下げたほとんどの団員が、この際少年でも構わないなどという危ない境地に達していた。

「ルカ、君の剣の型は、もしかして剣豪バルベ殿のものか?」

 キュプカーにそう尋ねられて、ルカは首肯(しゅこう)した。

「はい、わたしの剣の師は確かにウッツ・バルベです」

 ルカの言葉に周囲がまたどよめいた。ウッツ・バルベとは、騎士ならば必ず耳にする伝説の剣豪だ。彼にあこがれて騎士団の門をたたく者も少なくなかった。

 平民から剣豪にのし上がったバルベは、特に同じ平民出の騎士たちにとってあこがれの人物である。継ぐ爵位がない貴族子息が騎士団に入団する事もあるが、才能や実力がある者なら平民にも騎士としての門戸は開かれていた。

「しかしなんでまた剣豪バルベがお貴族様の師匠なんかに……」

 うっかりとそんな言葉を漏らした騎士の口を、周りの者が慌てて塞ぎにかかった。その言葉を気に掛けるでもなく、ルカは天使のような笑みをそのうっかり発言の騎士に向けた。

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