ふたつ名の令嬢と龍の託宣
◇
その頃リーゼロッテは、泣き虫ジョンのいる裏庭で例のごとくベンチに腰かけていた。
今日のジョンは頑なに言葉を発しない。いつもはもう少し会話ができるのだが、ジョンは枯れ木の根元でうずくまったまま、指先ひとつ動かさないでしくしくと泣いている。
リーゼロッテは、手持ち無沙汰になって空を見上げた。
今日は雲の流れが速い。肌寒い風が吹き抜けて、もうすぐ雨が降りそうな空模様だ。そう思っている最中、ぽつりと頬に雨粒を感じた。
「リーゼロッテ様、今日はもうお部屋に戻りましょう」
エマニュエルに促されて、リーゼロッテは立ちあがった。
その時、遠くから犬の鳴き声が聞こえてきた。うぉんうぉんと低く響く鳴き声から、大型犬なのだろうとリーゼロッテは想像した。その声はどんどんこちらへ近づいてくる。
建物の陰から毛足の長いたれ耳の大型犬が駆けてくるのが目に入った。やってきたのは顔と耳先だけが黒い、クマのように大きな茶色の犬だった。
「あら、レオン」
エマニュエルが声をかけると、レオンと呼ばれた犬はエマニュエルの前で立ち止まって、行儀よくお座りした。
何度かふさふさのしっぽをばっさばっさと大きく振ると、レオンは再び立ち上がりトコトコと泣き虫ジョンのいる木の根元へと歩いて行った。
「あっ」
リーゼロッテが声を上げたときにはすでに、レオンは片足を上げておしっこの姿勢をとっていた。しーと放物線を描いてそれは放たれた。泣き虫ジョンの背中に向けて。
黄色い液体はほかほかと湯気を立てながら、泣き虫ジョンを突き抜けて、木の根元へと注がれていく。
その頃リーゼロッテは、泣き虫ジョンのいる裏庭で例のごとくベンチに腰かけていた。
今日のジョンは頑なに言葉を発しない。いつもはもう少し会話ができるのだが、ジョンは枯れ木の根元でうずくまったまま、指先ひとつ動かさないでしくしくと泣いている。
リーゼロッテは、手持ち無沙汰になって空を見上げた。
今日は雲の流れが速い。肌寒い風が吹き抜けて、もうすぐ雨が降りそうな空模様だ。そう思っている最中、ぽつりと頬に雨粒を感じた。
「リーゼロッテ様、今日はもうお部屋に戻りましょう」
エマニュエルに促されて、リーゼロッテは立ちあがった。
その時、遠くから犬の鳴き声が聞こえてきた。うぉんうぉんと低く響く鳴き声から、大型犬なのだろうとリーゼロッテは想像した。その声はどんどんこちらへ近づいてくる。
建物の陰から毛足の長いたれ耳の大型犬が駆けてくるのが目に入った。やってきたのは顔と耳先だけが黒い、クマのように大きな茶色の犬だった。
「あら、レオン」
エマニュエルが声をかけると、レオンと呼ばれた犬はエマニュエルの前で立ち止まって、行儀よくお座りした。
何度かふさふさのしっぽをばっさばっさと大きく振ると、レオンは再び立ち上がりトコトコと泣き虫ジョンのいる木の根元へと歩いて行った。
「あっ」
リーゼロッテが声を上げたときにはすでに、レオンは片足を上げておしっこの姿勢をとっていた。しーと放物線を描いてそれは放たれた。泣き虫ジョンの背中に向けて。
黄色い液体はほかほかと湯気を立てながら、泣き虫ジョンを突き抜けて、木の根元へと注がれていく。