ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 ジョンは異形だ。分かっている。分かってはいるが、いつものようにめそめそと泣いているジョンのその背中は、いつも以上に涙を誘った。あまりの悲劇にその光景から目が離せないまま、リーゼロッテは口元に手を当てた状態でその場を動けないでいた。

 しーしょろろと放物線は勢いを弱めて、やがてレオンは足を下ろした。

「あ、レオンがジョンにおしっこかけてら。こりゃ大雨が三日は続くぞ」
「ああ、庭師と洗濯場にも伝えた方がよさそうだ。あとは(うまや)だな」

 通りがかった使用人の男たちのそんな会話が耳に入ってくる。

「レオンは普段ここには近寄らないのですが、なぜだか大雨の前にだけこうやってこの場に来るのですよ」

 エマニュエルが補足するように言った。

(犬の天気予報?)

 リーゼロッテが目を丸くしていると、レオンは満足げな顔をして、来た時と同じようにウォンウォンと鳴きながら走り去っていった。

< 578 / 678 >

この作品をシェア

pagetop