ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 驚いて振り向くと、リーゼロッテの座るソファの後ろにジークヴァルトが立っていた。

 ジークヴァルトはリーゼロッテの手首を掴んだまま、背後から反対の手を回してリーゼロッテの二の腕の下のあたりを、ぷにぷにぷにと確かめるようにつまんで見せた。

「なるほど」

 耳元でそう言うと、ジークヴァルトは何事もなかったかのようにリーゼロッテから手を離した。そのままサロンから出ていこうとする。

(な、なるほどってどういうこと……!?)

 リーゼロッテは口をぱくぱくさせてジークヴァルトを目で追った。

「何をしている。執務室で特訓だ」

 入口の手前でジークヴァルトは、腕を上げたまま固まっているリーゼロッテを振り返った。

「エラが今、紅茶を淹れに……」
「問題ない。先ほどそこで執務室に持ってくるよう伝えておいた」

 そっけなく言うとさっさと歩いて行ってしまう。

(はぐれたらまた迷子になるわ!)

 リーゼロッテはあわててソファから立ち上がり、ジークヴァルトの背を追った。カークがその後をゆっくりとついて来る。

< 593 / 678 >

この作品をシェア

pagetop