ふたつ名の令嬢と龍の託宣
     ◇
「リーゼロッテ様はご自分のお力を、どのように感じておいでですか?」

 公爵家執務室のソファに隣り合わせで腰かけて、エマニュエルはリーゼロッテに問いかけた。その様子をジークヴァルトとマテアスは領地の仕事の傍らで聞いている。

「そうですわね。……なんだか緑色のふわっとしたかたまりがこの胸のあたりにあって、それが自然とふわりと広がって、体が全体的にふんわり包まれているような感覚で……あと、身の内から、こう……ふわふわっと溢れてくるような、そんな感じがしますわ」

 我ながらふわふわとしか言ってないやんけと思うのだが、リーゼロッテにはそれ以外に言いようがなかった。

「掴みどころがない、と言ったところでしょうか?」

 確かめるようにエマニュエルに聞かれて、自分の語彙(ごい)のなさに少々羞恥を覚えながらも

「ええ、まさにそんな感じですわ」とリーゼロッテは頷き返した。

「では、リーゼロッテ様は、まずは力の流れを感じ取る訓練から始めるのがよさそうですね」
「力の流れを感じる訓練?」
「ええ。ですがその前に、リーゼロッテ様にはもう少し力の特性を知っていただきます」

 言いながらエマニュエルは手のひらを上に向け、その上に自分の力を集めて見せた。

「ここに集めた力がお分かりになりますか?」
「ええ……エマ様の力も青いのですね……」
「力は瞳の色に宿ると言われています。わたしは小鬼を祓う程度にしか力を持っておりませんので、旦那様ほど濃い色ではありませんが……。ここに集めた力が渦を巻いているのはお分かりになりますか?」

 そう言われてリーゼロッテはエマニュエルの手のひらをじっとみつめた。青いその力は、よく見るとくるくると回っているのが見える。小さな竜巻がそこにとどまっているようだ。

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