ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「闇雲に力を集めようとしてもうまくいきません。このように力の流れを収束させて、一点に集中させることによって効率よく力を集められるのです」

 ここまでご理解いただけましたか?、そうエマニュエルに問いかけられ、リーゼロッテはゆっくりと深く頷いた。

「力を集める先は、やはり手の内がいちばん簡単だと思います。ですが、やり方は人により様々です。わたしはこのように手のひらに集めるのが得意なのですが、マテアスなどは指先に集める方がやりやすいようですね」

 話を向けられたマテアスは、執務机に座ったまま立てた人差し指をくるくると回した。その指先に、エマニュエルと同じほのかに青い光が収束していく。

「まあ! マテアスもエマ様と同じ色なのね」

 糸目のマテアスの瞳の色など考えたこともなかったリーゼロッテは、思わずそう口にした。

「エマニュエル様とわたしは姉弟ですから。父のエッカルトも似た色ですよ」

 マテアスにそう言われ、リーゼロッテは驚いたようにマテアスとエマニュエルと交互に見やった。

「わたしは母似でマテアスは父に似ましたからね」
「え? ということはエマ様のお母様はロミルダなの?」
「ええ、そうですよ。わたしはもともとは使用人の娘としてここ公爵家で育ちましたし、子供の頃からアデライーデ様付きの侍女として仕えておりました。たまたま子爵家の後妻に入りまして貴族の地位を得ましたけど」

 エマニュエルは泣きぼくろのある目を細めて笑って見せた。色香ただようエマニュエルにリーゼロッテは思わずドキっとしてしまう。きっとこの色気に子爵もやられてしまったのだろう。

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