ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 軽くめまいを覚えたリーゼロッテは、仕方なくジークヴァルトの腕の中で力を抜いた。
 首を巡らせると斜め向かいのソファで、エマニュエルがマテアスに介抱されるように背中をさすられている姿が目に入った。

「エマ様!?」

 また自分が何かやらかしたのでは? 咄嗟にそう思ったリーゼロッテは顔を青くした。

「申し訳ございません。リーゼロッテ様のお力が大きすぎて……。受け止めきれずに少し当てられてしまったようです」

 リーゼロッテが息をのむと、エマニュエルは無理をしたように笑って見せた。

「問題ありません、わたしは大丈夫です。旦那様が流れを引き取ってくださいましたから」
「リーゼロッテ様は加減を覚えることが急務ですねぇ」

 異形を祓うのはこの際どうでもいいが、力のコントロールを身につけなければ、また倒れてしまいかねない。

 リーゼロッテの力に惹かれてか、執務室の中にはかつてなく異形の者が集まっていた。ジークヴァルトがいるので近づけないが、遠巻きにしながらリーゼロッテをじっと見つめている。

「流れを制御できるようになれば、それも難しくありませんから」

 エマニュエルはリーゼロッテを安心させるように微笑んだ。

< 599 / 678 >

この作品をシェア

pagetop