ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「だが、今日はここまでだ」

 ジークヴァルトはそう言って、リーゼロッテの口にクッキーを一枚押し込んだ。

(うう、ダイエットが……)

 今は力が抜けた状態なので、クッキーを食べなくてはならない場面なのだろう。そうは思うのだが、ジークヴァルトは必要以上に、自分に餌付けしているように思えてならない。

(力の流れがコントロールできるようになれば、クッキーの必要な量も自分で把握できるかしら……)

 目標があれば達成までの道のりも苦ではなくなるはずだ。黙って口を動かしながらリーゼロッテは真剣に考えこんだ。

 ジークヴァルトはこれ幸いとリーゼロッテの口の中へ、次から次へとクッキーを差し入れていく。思考に耽っているせいでそれには気づかずに、リーゼロッテは条件反射のようにひたすらその口をもくもくと動かした。

「……破壊力抜群ですねぇ」

 マテアスがぽつりと言った。

 無表情のジークヴァルトの膝の上で、リーゼロッテが可愛らしい小さな口で懸命にクッキーを食べる様は悶絶級だ。

 なんだろう。もっと食べさせたい。何なら自分でクッキーを差し入れたい。

 鉄面皮のジークヴァルトとのコントラストが何とも言えずシュールでもあった。天使と悪魔? 妖精と魔王? この場面を見たら、誰しもがそう思うことだろう。

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