ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 リーゼロッテは伯爵家の令嬢として、このお茶会の招待を受けた。義母親(ははおや)のクリスタは、足に怪我を負っていたため、同行したのは侍女のエラだけだ。社交界デビュー前の令嬢を、母親のつき添いもなしに王妃のもとに送り出すのは、普通ならあり得ないことである。

 しかし、リーゼロッテのたっての願いで、クリスタにはこのお茶会を欠席してもらった。本当はけがを押してでも同行しようとしたのだが。

 このお茶会においてリーゼロッテの最大のミッションは、致命的な粗相(そそう)をしないこと。
 この一択である。

 つまずいて転ぶなり、お茶をこぼすなり、何かしらのことはやらかすだろう。なぜなら、それはリーゼロッテだから。

 リーゼロッテが生まれてこの方、大小差はあれ、粗相をしなかった日があったであろうか。何もないところで転ぶのは日常茶飯事、食事中に皿をひっくり返したり、屋敷の調度品を破壊したりなど、トラブルは枚挙に(いとま)がない。

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