ふたつ名の令嬢と龍の託宣
【第29話 守護者の本懐】
――ヴァルトの子供、今すぐにでも孕んでもらうから
ジークヴァルトの口から紡がれた言葉に、リーゼロッテは一瞬、抵抗を忘れた。色をなくした唇を引き結び、確かめるように青い瞳をじっと見つめる。
ひとつひとつの言葉の意味はもちろん分かる。分かるのに何一つ理解ができない。
「ハルト様の……おっしゃっている意味がわかりませんわ……」
震える声で、リーゼロッテはそれだけをようやく口にした。
今、目の前で自分を組み敷いているのは、ジークハルトなのだ。動揺に打ち震えながらも、どこか冷静な部分でそのことだけは理解した。
だとしても、何がどうしたらこうなるというのだろう? どうあっても信じられない。なぜ? という疑問だけが頭の中を占拠していた。
「言った言葉、そのまんまだよ。それに王城でオレのお願い、ひとつ聞いてくれるって約束したよね? 忘れたなんて言わないでよ」
そう言いながらジークハルトは眩しそうに目を細めた。
仰向けに組み敷かれたリーゼロッテの長い髪が、執務机の上に広がっている。万年筆やインク壺などの事務用品が並ぶ机の上では、艶やかな蜂蜜色はなんともアンバランスな光景だった。
「……ヴァルト様はどうなったのですか?」
「心配しなくても大丈夫だよ。ヴァルトはこの中にちゃんといるから」
ジークヴァルトの口から紡がれた言葉に、リーゼロッテは一瞬、抵抗を忘れた。色をなくした唇を引き結び、確かめるように青い瞳をじっと見つめる。
ひとつひとつの言葉の意味はもちろん分かる。分かるのに何一つ理解ができない。
「ハルト様の……おっしゃっている意味がわかりませんわ……」
震える声で、リーゼロッテはそれだけをようやく口にした。
今、目の前で自分を組み敷いているのは、ジークハルトなのだ。動揺に打ち震えながらも、どこか冷静な部分でそのことだけは理解した。
だとしても、何がどうしたらこうなるというのだろう? どうあっても信じられない。なぜ? という疑問だけが頭の中を占拠していた。
「言った言葉、そのまんまだよ。それに王城でオレのお願い、ひとつ聞いてくれるって約束したよね? 忘れたなんて言わないでよ」
そう言いながらジークハルトは眩しそうに目を細めた。
仰向けに組み敷かれたリーゼロッテの長い髪が、執務机の上に広がっている。万年筆やインク壺などの事務用品が並ぶ机の上では、艶やかな蜂蜜色はなんともアンバランスな光景だった。
「……ヴァルト様はどうなったのですか?」
「心配しなくても大丈夫だよ。ヴァルトはこの中にちゃんといるから」