ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 今、自分が見ている光景も、リーゼロッテを押さえつけているこの手の感覚も、ジークヴァルトには何もかもが伝わっているはずだ。ジークヴァルトにしてみれば、自分がやっている自覚があって、ただ心が伴わない状態だろう。

 意識の奥に閉じ込めたジークヴァルトの抵抗を感じながら、ジークハルトは手首を押さえつけたまま、リーゼロッテの首筋に顔をうずめた。かすかな笑い声と共に、その吐息がリーゼロッテの耳にかかる。

「ヴァルトの言ってた通りだ。リーゼロッテ、君はとてもいい匂いがするね」

 くすくすと笑いながら、首筋に唇を滑らせる。

 守護者は守護する相手と常につながる存在だ。その者が何を見、何を感じ、何をどう考えているのか、守護者には余すことなく伝わってくる。ジークヴァルトが経験してきたすべてを、ジークハルトはつぶさに感じ、その傍らで見守ってきた。

 肌の上を這う舌の動きに全身が泡立ち、ぞくりとした不快感にリーゼロッテは身をよじった。

「それで抵抗してるつもり?」

 足をばたつかせて逃れようとするも、大きな体でのしかかられて簡単に動きを封じられてしまう。ドレス越しに足を割られて、ぐっと腰を押し付けられる。

「お願いです! やめてくださいませっ」

 肩を浮かして掴まれた手首を振りほどこうと、リーゼロッテは必死にもがいた。その様子をジークハルトは楽しそうに眺めている。

「無駄なのに。こんな細い腕じゃ何もできやしないよ」

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