ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 めずらしく地に足をつけて登場したジークハルトは、銀色の高貴そうな甲冑を身につけて、全身が血まみれの状態だった。頭から血を流し、その背中や腕などに何本もの矢が刺さっている。

「もしかして……ジークヴァルト様に……?」
『……うん、実は……』

 (うつむ)いて苦しそうな表情を見せる。

「そんな……!」

 口元に手を当てて、リーゼロッテは信じられないといったように小さく首を振った。
 ジークハルトは瞳を伏せて、『いいんだ、すべてはオレが悪かったんだから……』と苦し気につぶやいた。

 みるみるうちにリーゼロッテの瞳に涙がたまっていく。その様子を神妙な顔で見つめていたジークハルトは、しかし突然、ぷっと噴き出した。

『って言いたいところだけど、これは別にヴァルトにやられたわけじゃないよ』

 肩をすくませて、血まみれのままいつものように悪びれない笑顔を向けてくる。

「ええ? でしたらその格好は一体……?」

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