ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 ある時、国で長い雨が続きました。
 やまない雨に作物は不作となり、やがてうえや病気に苦しむ人々が増えていきました。

 王女の国では、わざわいは龍の怒りによるものとされていました。
 人々は、山の奥深くに住む龍に、怒りをおさめてもらおうと、たくさんのおくり物をしました。

 しかし、龍は凍てつく息で人々をおそれさせました。
 龍の気に当てられ、病気になる者ものも多く出ました。
 鋭い青い瞳に気おされて、その場で命をおとすものすらいたほどです。

 龍をおそれ、山に近づくものは誰もいなくなりました。
 そして、雨がやむことはありませんでした。

 長雨が続く中、塔の中で王女はずっと祈り続けました。
 しかし、今度は3日たっても4日たっても、神さまの声は聞こえません。
 皆がとめるのも聞かず、王女は眠ることもせず、命をかけて祈り続けました。

 王女の体力がつきようとした7日目の夜、ようやく王女の耳に神さまの声が聞こえました。
『大河の土手をあらためよ』

 そのことを聞いた王さまは、王都に流れる大河をすみずみまで調べさせました。
 すると、ある場所の土手がくずれていたのです。
 このまま放っておいたら、大河の水が王都すべてをのみこんでいたでしょう。

 王女の伝えた声により、土手を修復して、王都と人々は大きなわざわいを未然に防ぐことができました。
 その後、雨はやみ、国は平和をとりもどしました。

 このころより王女は、神の声を届ける星読みの王女として、国民の信をあつめる存在となりました。
 王女は明けても暮れても、神さまに祈りをささげる日々をすごしました。

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