ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 なにせ、リーゼロッテには王命によって決められた婚約者がいた。王命は、貴族にとって絶対である。そもそも、王子のお見合いパーティーに呼ばれたこと自体が謎である。

 不安だが、ここまできたらやりきるしかない。

(まあ、何かやらかして、王子殿下の目にとまったりすれば、それこそラノベ的な展開だけれど)

 そんなことを思っていると、庭園に続くテラスの扉が開かれ、令嬢たちを中庭へと促す声が聞こえてきた。気の早い令嬢と母親たちは、我先に王妃の庭園へと向かっていく。

 リーゼロッテはみじろぎもせず、椅子に浅く腰かけたまま、そんな令嬢たちを見送っていた。とうとう最後の令嬢となったリーゼロッテは、ゆっくりとした動作で立ち上がった。

 もったいぶっているのではない。転ばないように、最大の注意を払った結果、(おの)ずとそうなるのだ。

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