ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 一瞬とも永遠とも思えるような時間が過ぎて、ジークヴァルトはゆっくりと顔を上げた。

 紅潮した頬で息を弾ませているリーゼロッテは、脱力して椅子の背もたれにもたれかかったままだ。押し下げた襟足をそっと戻すと、ジークヴァルトはその身を起こして立ち上がった。

「だいたいのことは把握した」

 そう言うと、ジークヴァルトはリーゼロッテを見下ろした。

「お前、しばらくオレのそばを離れるな」

 無表情でそう告げたジークヴァルトに、リーゼロッテは力なくその視線だけを返した。

「……このまま家には帰さない」

 そう言うとジークヴァルトは、クッキーをひとかけら手に取り、再びリーゼロッテの口に押し込んだ。

「覚悟はいいな?」


(ちょ、それ、悪役のセリフですよ、魔王様!!!)

 クッキーを詰め込まれた口の中で、リーゼロッテは声にならない悲鳴を上げたのだった。


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