ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「体調がすぐれないところ悪いけど、君には確認しないといけないことがある」

 王子の言葉に、リーゼロッテは「はい、なんなりと」とかすれた声で返した。

 先ほどの少年が慣れた手つきで、リーゼロッテに紅茶を差し出す。にっこりと微笑む少年に、リーゼロッテはお礼を言ったが、紅茶には口をつけようとはしなかった。

 のどは渇いていたが、王子の前では緊張でうまく飲めそうにない。紅茶をこぼしてカップを割ったりするなど、もってのほかだった。

 おもむろに横から手が伸び、湯気の立つティーカップがソーサーごと無造作に持ち上げられた。横を向くと、ジークヴァルトが無言でリーゼロッテにカップを突きつけていた。青い瞳がじっとみている。

(黒いもやもやが……ホントになくなってる)

< 98 / 2,019 >

この作品をシェア

pagetop