妖と餡子
 私はあんこをよく食べる。
 別に好きだから食べるわけじゃない。“あいつ”らを確実に見るためだ。“あいつ”らの体の細部まで隅々見て、その場でデッサンをする。
 そのためにあんこを一日に何回も食べる。
 起きたら食べ、通学中に食べ、授業が始まり前に食べ、終わったら食べ、昼食がわりに食べ、下校する前に食べ。夕食はパンに塗って食べる。
 そんな生活を10年も続けている。
 たまに“あいつ”らに食われそうになるが、血一滴食わせるぐらいで、今まで何とか生き延びられた。
 神社やお地蔵さん、古い蔵の前で一日座り込んでいることも、多々あった。
 通りすがる人たちも、大体は顔馴染みで放って置いてくれる。たまに、おばちゃんたちが大福をくれるから、腹も膨れる。
 昨日、家にあるデッサン帳が、本棚からついに溢れた。
 自室はリビング帳で溢れかえっているから、リビングに本棚を置いたのに、そこも使えなくなった。
 祖父母が残してくれた家のおかげで、部屋の数に困ることはないと思っていたけど、このままでは新しく家を買うほかなくなる。
 どうしよう、と頭を悩ませていたとき、玄関のチャイムが鳴った。
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