僕を、弟にしないで。僕はお義父さんの義息子になりたい
その日、俺は紫月さんの気が済むまで、弟さんの話を聞いた。他にも俺は紫月さんから料理を教わってご飯を作ったり、紫月さんとゲームをしたりして、あらゆる手段を使って、紫月さんのことを励まそうとした。それでも紫月さんは一向に元気にならなかった。
そのため、俺は母さんには電話でお礼を言うことにした。
電話をかけると、母さんはワンコールで出て、拓人さんと姉ちゃんのことを話してくれた。
拓人さんは、もう家には来ないらしい。生活費や学費の援助も、もう頼まないことにしたそうだ。拓人さんは俺や姉ちゃんに会えないのが嫌で、家に来ないのを渋っていたらしいのだが、母さんが説得して、どうにか納得させたらしい。
姉ちゃんは、逮捕はされたけど、事情聴取では相変わらず黙秘を貫いているそうだ。通報をした時に紫月さんが警察に虐待のことを一通り説明してくれたらしいのだが、姉ちゃんは俺に虐待をしたことを一向に認めてくれていないそうだ。俺は虐待から解放された。でも問題はまだまだ山のようにある。
『ねえ蓮夜、学校にはもう、行けそうにない?』
俺が言ったお礼の言葉に頷いた後に、そう母さんは言った。
「学校は……」
下を向いて呟く。
『やっぱりまだ難しいかな? 明日は月曜日だから、飾音が逮捕されたなら蓮夜が学校に行くのに怯える理由もないと思うし、戻ってみるのも良いかと思ったんだけど』
行くのが怖くないと言ったら、嘘になる。でも、確かに、もう学校に行っても大丈夫そうではあるよな。
「蓮夜、俺が車で学校の送り迎えをするから、行ってみたらどうだ? まあ、俺の怪我が治るまでは大地さんが車を運転することになると思うけど」
「え、良いの?」
「ああ、良いよ。クソ姉の彼氏が何かしてくる可能性もあるし、俺もその方が安心だから」
「じゃあ、……行こうかな」
『そう! そしたら後で、鞄や教科書を届けに行くわね! 頑張ってね、蓮夜』
「うん。ありがとう、母さん。じゃあ、来る時連絡して。また後でね」
『ええ、またね』
母さんの言葉に頷いて、俺は電話を切った。
その日の翌日から、俺は学校に行くことにした。久しぶりに行くのは怖かったけど、紫月さんや大地さんが送ってくれたから、俺は無事校門をくぐって教室に行くことができた。その後も、俺は順調に学校に行くことができた。けれど、紫月さんは全然元気にならなかった。紫月さんは、相変わらず俺には優しく話しかけてくれている。ただ、作り笑いをすることが多くなってしまった。もう俺は、紫月さんが心の底から笑った顔を一週間は見ていない。