意地悪な副社長との素直な恋の始め方
それは、プロポーズじゃなく命令です


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いつもより、ほんの少しだけ遅く起きた朝。
先にシャワーを浴び、入れ替わりに朔哉がシャワーをしている間、ベッドのシーツを取り替えながら、ひとり赤面した。


(なんていうか……めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど)


初心な処女でもあるまいし、恥ずかしがるなんて、キャラがちがうだろうと自分でも思う。

しかし、酔ってはいたけれど、昨夜の記憶はくっきり、はっきり、しっかりある。

昨夜は、いままでしていたのはセックスじゃないんじゃないかと思うほど、身も心も、乱れたベッド並みにぐちゃぐちゃだった。
全部を相手に委ねることで、まったくちがうものになるのだと、初めて知った。

起き上がれなくなるような事態になっていないのは、朔哉が手加減したからだろう。
余裕があるのは経験豊富な証拠のようで、ちょっとムカつく。


(だからって、高校生並みにガツガツしてほしいというわけでもなくて……我を忘れるほど夢中になってほしい……いやいや、そんなこと、恥ずかしすぎて言えないし! じゃあ、誘惑してみろとか言われても出来ないし!)


ボフッボフッと枕をサンドバッグにしていると、シャワーを終えた朔哉に、怪訝な顔で訊ねられた。


「何の予行練習だ?」

「え? や、別に!? 枕に空気を送り込んでただけ」

「空気? 渾身の力で殴りつけていただろう。ベッドまで破壊する気か?」

「は? そんな力ないし!」


昨夜の流れで甘い雰囲気に浸る……なんてことにはならず、ついいつものような遣り取りを繰り広げてしまう。

距離を保ち、壁を作って接することに慣れすぎて、いきなり素直になるのは難しかった。

でも、どうすれば素直になれるか、思い出したい。

すべての不安が消えたわけじゃない。
何があっても揺らがない自信がついたわけでもない。

それでも、少しずつでもいいから、歪な関係を新たなものへ書き換えたい。

そう思っていたのは、わたしだけではなかったようだ。
朝食を終え、コーヒーを飲んでいた朔哉が、らしくもなく控えめに提案した。


「偲月。もし予定がなければ……これから出かけないか?」

「え?」

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