意地悪な副社長との素直な恋の始め方
はじめてのデート


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(ぜんぜん、起きる気配ないんだけど……)


土曜日の朝。
珍しく朔哉より先に目が覚めた。

もともと一度眠りに入ると、アラームが鳴るまで。もしくは、身体が欲した分の睡眠を確保するまでは、途中で目覚めることのない朔哉だが、同居生活を始めてから、わたしより後に起きることはなかった。

しかし、忙しい日々が続き、さすがに疲れているのだろう。
わたしが起き出したことにも気づかず、熟睡している。
心なしか頬のラインも、少しシャープになった気がする。


(ちゃんと食べてるの……?)


四六時中一緒にいる芽依は、朔哉が無茶なことをすれば黙っていないと思うけれど、二人がどんな風に忙しい日々を過ごしているのか、知りようもない。

訊けば教えてくれるかもしれないが、もしかしたら、知りたくないことまで知ってしまうかもしれないと思うと、訊けない。



『わたしとお兄ちゃん、血が繋っていないの。本当の兄妹じゃないの』



夕城家を訪ねた先週の日曜日からずっと、芽依の言葉が頭から離れなかった。

茫然としながらリビングへ戻り、帰宅するまでの数時間。どうやって乗り切ったのか記憶にない。

あれから一週間。
芽依から連絡が来るようなことはなく、朔哉が彼女の名前を口にすることもなかった。

そもそも、朔哉の帰宅は毎晩深夜で、朝もわたしより先に出てしまう。
かろうじて、顔を合わせることだけはできていたけれど、会話と呼べるほどの会話はなかった。

そんな風にして、表面上は何も変わらない、けれど穏やかとは程遠い気持ちを抱えたまま、今日――芽依の二十四歳の誕生日を迎えてしまった。


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