意地悪な副社長との素直な恋の始め方
副社長はサプライズがキライ
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不動産取引を主軸として成長してきた『ＹＵ－ＫＩホールディングス』は、今年で創業五十周年。
国内外に数多くの高級アパートメントやリゾートホテルを所有するだけでなく、高級レストランやトラベル、ブライダル関連と膨大な数に上るグループ会社を傘下に収める大企業だ。
そのヘッドクォーターである二十五階建ての自社ビルには、日々いろんなお客さまがやって来る。
真っ先に彼らを出迎える受付は、いわば会社の顔。
身だしなみを整え、常に笑顔を維持するのは必須事項。
第一印象がすべて、といっても過言ではない。
が、お昼休憩のあとは、アクビを堪えるのが辛い。
ルームシェアしている大学時代からの友人――ナツの二股、いや四股くらいしていたらしいホストカレシとの泥沼破局のヤケ酒に、三日連続で一晩中付き合わされて寝不足となれば、なおさらだ。
（ね、眠い……）
「偲月ちゃん。今日の合コン、やっぱりダメ？」
何回目かわからないアクビを無表情で噛み殺したところへ、同じく受付担当であるサヤちゃんが声を潜めて訊ねてきた。
キレイにカラーリングされた栗色のセミロングの髪。
身長百六十センチで細身。でも、胸は大きい。モテ要素満載のカワイイ女子。
しかし、その生態は肉食。
プライベートはすべて婚活に捧げ、あらゆる伝手を使って週末には必ず合コンに参加、または自ら企画。二回に一回は試しにお持ち帰りされてみるらしいが、運命の相手には巡り会えずにいるようだ。
いっそ婚活を仕事にしてしまってはどうかと思わなくもない。
「うん、ごめんね？ 約束があって」
実際には何の予定もないけれど、一年のうち今日という日――誕生日だけは、予定を入れないと決めていた。
特別な習慣があるからではなく、何かの都合で予定がキャンセルになるのがイヤだから。
期待しなければ、落ち込むこともない。
だったら、期待するようなことをしなければいい。
そういうことだ。
