意地悪な副社長との素直な恋の始め方
ぎゅっと眉根を寄せた芽依の瞳は潤み、その唇は震えていた。
彼女のしたことを、キレイに水に流すには、もう少し時間が必要かもしれない。
でも、許せないとは思わなかった。
彼女がわたしを傷つけたのと同じくらい……もしかしたら、もっとたくさん、わたしは彼女を傷つけていたかもしれないから。
好きなひとが、自分以外のひとと親密な関係を築くのを、誰よりも近くで見ている辛さは、理解できるから。
わたしと芽依の立場は、出会ったタイミングやその時の状況、何かが少しでもちがっていたら、入れ替わっていたかもしれない。
家族になれないと苦しむこともあれば、家族にしかなれないと苦しむことだってある。
芽依の朔哉に対する気持ちが、恋じゃなかったなんて否定する権利は、わたしにはなくて。
芽依と朔哉の関係は二人の問題で、わたしにはどうすることもできない。
夕城家で過ごした日々は、わたしにとって唯一と言ってもいい「家族」の思い出で、わたしは芽依と「姉妹」になれたことを後悔していないし、これからも、後悔することはないだろう。
「わたしも……朔哉とのこと、ずっと黙っててごめん」