意地悪な副社長との素直な恋の始め方

(もしも、まだ帰りたくないと言われたら……頷くしかないのか? もしも、このままの距離がいいと言われて、頷けるのか?)


そんなことを考えていると、一組のゲストを見送り、次のゲストに対応するまでの一瞬、顔を上げた芽依と目が合った。

上で待つ、とジェスチャーで伝えると軽く微笑んで頷く。

予約しているのは芽依が勤務するこのホテルのレストラン、時間を区切ってのリザーブではないから、多少遅れても問題はない。
のんびり待とうと決め、最上階にあるレストラン併設のバーへ向かった。


『こんばんは。ご注文は……』

『シェリー。フィノを』


カウンター席に座ると同時に注文し、社用のスマホを取り出して急ぎ対応すべき案件が持ち込まれていないことを確認する。
同じように、プライベートのスマホも確認しようとして、待ち受けに映し出された家族の写真に、思わず溜息を吐いた。


(今年も、ダメだったな)


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