恋愛計算は間違える(アルバートとテレーサ)

ブランシュール城・翌々日・朝8時25分 9-11ページ

<翌日の8時30分>

アルは使用人住居を、自分の住処(すみか)とした。
その報告と車の修理をすぐにしなくてはならない。

8時30分に扉の鍵が開いた。
テレーサ本人が出て来た。
今日は無地の灰色一色の服装だった。

「おはようございます。
テレーサ様」
アルは待ち構えたように挨拶をした。

「おはようございます。・・
ロランドさん?」
テレーサはちょっとアルの名前を
思い出すのに、
時間がかかる風だった。
それには気に留めず、アルはすぐに要望を述べた。

「私はあそこの使用人の家を、
使わせてもらいます。
それから車の修理をしたいのですが、部品などの金が必要です」

テレーサは少し考えるようであったが、
やっと聞き取れる小さな声で答えた。
「・・・車の修理ですか?
そうですね、あれば助かります。
・・・わかりました」

アルは、もう一度テレーサの顔を見た。
相変わらず生気が感じられない。
青ざめた頬だが、
群青の瞳はやっとアルに向けられたように見えた。

「それでは失礼します」
アルはガレージに向かった。

まずは、あの古い車を何とかしなくてはならない。

< 16 / 72 >

この作品をシェア

pagetop