恋愛計算は間違える(アルバートとテレーサ)
<ブランシュール城・10時30分>

アルは油だらけの手を拭きながら、館に向かった。

村にこれから行って、部品を調達しなくてはならない。
あと、自分の生活に必要なものも買いたい。

館の扉を開けると、誰か来ているらしい。
応接室で声が聞こえる。

「中の宝石はガラスですねぇ・・
それに金メッキで・・
デザインはアンティークですが、
こういったデザインは
値段が付かないのですよ」

でっぷり太った紳士とテレーサが
机を挟んで(はさんで)で向かい合っていた。

机の上には
アンティークのブローチがひとつ置いてある。
「わかりました。いくらで買い取っていただけますか?」

テレーサは消え入りそうな声で聞いていた。
「そうですね・・多く見積もっても・・」

「失礼します」
アルはそう言って、すぐに机の上のブローチを手に取った。
中の宝石は美しいエメラルド。
インクルージョンがあるのは本物だ。
偽物のガラスではない。
枠は純金でそれなりに重さもある。美しい繊細な作りだ。

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