恋愛計算は間違える(アルバートとテレーサ)
アルは、
片手でテレーサを抱きながら、
彼女の耳元にキスをした。

次に耳たぶに甘噛みをした。

オレンジの香りが懐かしい。
次は唇に・・なのだが・・

テレーサはうつむき、
手で顔を覆い続けて、体を固くしていた・・

同じように緊張しているのだろう。

この絶滅危惧種の姫君は、
まず最初に
<神様の前で愛を誓え>と言うはずだ。

それでもいい・・
時間はまだあるから・・・

それに女狐リエットの件も
誤解を解かねばならない。

そのためにも

「結婚ですよね。結婚しましょう。結婚すべきです。俺とね」

アルはテレーサの耳元で3回、
しつこく強調して言った。

テレーサは・・
うつむいているが、
強く拒否はしていないので、
とりあえずアルは安心した。

よし・・次は・・と思う間もなく

テレーサは、アルにしがみつくように抱きついてきた。

ああ、これは同意だな・・
アルは判断した。

緊張感が解けて、
子どものようにすすり泣く
テレーサの背中を、ゆっくりなでてやる・・・

これでは、父親状態になっているが・・
今はこれでよしとすべきだろう。

彼女にしてみたら、
今日はいろいろありすぎた・・・
混乱もするだろうし・・

俺も使用人から教育係、そして
父親代理から、すぐに次のステップに進むから・・

もう少し、ロマンチックな状況で
プロポーズをしたかったが・・・

まずはテレーサのために、
オレンジ色の子猫を飼おう。

それから明日は二人で、オレンジを取りに行く。

この館のオレンジは、小さな太陽で希望の象徴になる。

テレーサを抱きながら、アルは、
ようやく自分の最後の仕事が
終わったことに満足を感じていた。
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