恋愛計算は間違える(アルバートとテレーサ)
<ブランシュール城・16時40分>

沈黙が続いたが、
アルが声を出した。

「俺は何を・・
ここで何をすればいいのですか・」

女領主は細い指先を顎にあてて、
しばらく考えているようだったが
「別に・・・何も・・」
その声は低めで、小さな声だった。

そしてアルの書類を手に取り、
二つに引き裂き、
最後には小さな破片になった。

「あなたはもう人質ではありません。ご自由に・・」
その瞳は相変わらず、ガラス玉だった。

アルは
想定外の女領主の行動に驚いたが、
「あの・・・自分のやった事をわかっているんですか」

女領主は、アルとは視線を交わす事無く
「人質とは・・神の御意思に反することです。
恐怖で人を支配できないでしょう」

そう言って、
女領主は小さくなった紙を
暖炉の中に入れた。
暖炉の炎が一瞬大きくなった。

アルバート・ロランドは
いきなり首輪が外されたので、
戸惑いもしたが、

「あの・・
いきなり俺がいなくなったら、
あなたが困るでしょう・・」

何かあれば、責任を取ることになる・・
テレーサ・ブランシュール・・・

アルは戸惑いながらも、つい言ってしまった。
「俺はしばらく、ここにいます」

この地なら、・・監視もない・・
どうにでもなる。
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