恋愛計算は間違える(アルバートとテレーサ)
黒い影の姫君は、淡々と事務連絡を言った。
「わかりました。
それでは雇用契約をします。

今日はもう遅いので、
村の宿屋に泊まってください。
明日、
8時30分にここに来るように
お願いします」

影の姫君はそれだけ言うと、
立ち上がった。
つられるように、アルも立ち上がった。

礼を言うべきなのか・・・・
アルが迷っている間に、
影の姫君は
別の扉から出て行ってしまった。

アルが館の外を出ると、
もうとっぷりと日が暮れていた。
古い館の窓は、
ひとつを除き真っ暗だった。

あの明かりがついている部屋に、
姫君がいるのか・・・・?

アルは首を振って、
村にむかって歩き始めた。

村は館と比較すると、
ずいぶん明るく灯が灯っている。
人が生活している気配に、気が緩んだ。

何か狐にばかされたようだ?

それでも
自分の新しい飼い主、
否、
雇い主の黒い影の姫君への
好奇心も生まれていた。
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